16.煙草賛?負け犬の遠吠え:煙草賛?私は20年ほど紫煙に包まれた生活をしている。 母が悪性腫瘍であることを知って、独り下宿暮らしの中、始めた煙草である。 最初は強い煙草をと下宿の先輩に頼んでショート・ホープを買ってきてもらった。 最初に手にしたショート・ホープの意外な軽さ。 きついニコチン・タールを肺一杯に吸い込む。 流れる涙を咳き込んで咽る煙草のセイにしたかったのだ。 それから、徹マンで『太陽が黄色い』って言ってから寝る生活が続くことになる。 そこら辺から私の煙草は母から遠ざかってしまったようだ。 30歳位の時に付き合っている女性が煙草嫌いだったので一時期喫煙を強いられることになる。 元々、煙草はダッ嫌いだったのだ。 実家から下宿に戻る国鉄の列車。 当時は未だ喫煙が可能であった。 向かいの席で煙草を吹かすオッサンが居ると必ず睨み付けたものだ。 『テメエが如何やってクタバローが勝手だが、人にまで迷惑をかけるな!』って。 駅のホームで彼女を乗せた列車が離れていくのを確認してから喫煙所で大きく煙草を吹かしていた。 だが、線路が湾曲しており彼女はホームで煙草を美味しそうに醸す私をキッチリ見ていたようだ。 ・・・後でスンゴク叱られた。 全幅の愛で包んでくれる母を失った私は恰も幼児の様な思考に支配されていた。 私は『私に煙草を辞めさせる人を待っていた』のだ。 私を愛してくれる人をズーッと・・・。 非常に幼稚で軟弱な思考回路である。 それは、今でも余り変わっていないような気もするが・・・。 流石に不惑の年を越えると、そんな幼稚なことは言っていられない。 『煙草は健康に悪いから敢えて吸うのだ!』ってマジに考えている。 『幼稚』から『成熟』を飛び越し『単なるバカ』になっただけのような気もする。 でも、健康ってそんなに大切なのか? 昔、TVで『無農薬の野菜』や『添加物の入っていない惣菜』を眼の色を変えて探す主婦の映像が流れていた。 携帯電話を片手にスーパーマーケットを徘徊する。 旦那は自宅でパーソナル・コンピュータを開けて、奥さんから告げられる添加物なんかを一所懸命に調べては携帯電話で奥さんに伝える。 TVのインタヴューを受ける奥さんの眼は、我々の世界とは、少し違う処を見ているような不気味さがあった。 『凄いものを見た!』 正直な感想である。 彼女達は、『健康に良いなんて商品を求めて、精神的に病んで行こうとしている?』 何か直感的に、そう思ってしまった。 中島らも氏が作品の中で、『世の中に完全に清潔なんてことはない。飽くまでも希釈の問題なんだ』って書いていた。 大気中には『細菌』がウヨウヨしている。 『清潔』なんて、『細菌』の量が比較的少ない状態でしかないと云うのだ。 今から10年前の中華人民共和国など衛生状態は悲劇的だった。 メシを喰えば石コロが入ってるなんて当たり前。 ドンブリに盛られたメシの一部が青かったり赤かったりしたこともある。 我々の常識では、ご飯を炊飯するだけなのに、如何すれば、その一部が『青』や『赤』に発色するのか全く理解できない。 オカズには、『亀の子束子』の構成部分が混じっていたりする。 如何するのか? 答えは簡単・・・。 『オカシイと思う部分は除けて喰えば良い!』 だから、日本国に居た頃の様に、メシをカキコムなんてことはなくなった。 先ず、『食べられるだろう部分・・・白いメシ』と『ヒョットしたら食べられないんじゃないのかなぁって部分・・・メシの青い部分の周辺』と『喰ったらヤバイと明確に判る部分・・・メシの青い部分』なんかを選り分けながら喰う。 人間喰わねえと生きちゃいけねえんだよ。 不味いってことは全くない。 塩味しか感じない日本国の食べ物の比じゃない。 ただ、屋台のラーメンを喰う時には、ドンブリに口を着けてはいけない。 ラーメンは熱で消毒されているが、ドンブリは充分に洗われていないから。 露天で卵を買ったら『茹で卵』はご法度。 必ず殻を割って、中身を確認しないと腐っていることがあるから。 壜入りのヨーグルトは先ず少し食べてから時間を置き、何ともなければ全部食べる。 数%の確立で腐っていることがある。 食事に際しての『鉄則』である。 全てが可能性と確立である。 ただ、ラーメンのドンブリに口を着けて食った奴や、 腐った卵を茹でて喰った奴や、 ヨーグルトを見境なく喰った奴。 『1週間に渡って、40度近い高熱に魘され、洗面器を抱えながら様式便器に座り込む』なんて『食中毒』の結果が待っている。 意識が朦朧としながらもベッドで眠ることが出来ない。 『上』と『下』から、間断なく『噴き出す』からだ。 そして、医者は基本的に『問診』である。 だから絶対に『抗生物質』なんて危なくて出さない。 『受付をする』 『診察器具を貰って待つ』 『問診を受ける』 『医師が問診結果を書いた紙を貰う』 『問診結果を指示された窓口に出す』 『薬の処方箋を貰う』 『処方箋を別の指示された窓口に出す』 『漢方薬を貰う』 『請求書を受け取る』 『請求書を別の指示された窓口に出す』 『お金を払う』 2階と1階を何度も行ったり来たりしながら、全て『中国語』で手続き踏む。 健康体でも辛い手続きである。 とてもじゃないが病人に出来ることじゃない。 『脂っこいものを食べないように!』 医者の助言である。 中華料理で『脂っこくないもの』なんて何処にあるんだ! 結局、他の留学生が持ち込んだ抗生物質なんかを分けて貰うことになる。 私が半年住んだ処は、『少なくとも病気になってから医者なんて、トテモじゃないが辛くて行けない』なんて場所だった。 だから、物を喰う時は、真剣である。 『食事の鉄則』は必ず守らなければならない。 それでも、偶に高熱を出す奴が出る。 そんな食事を『ロシアン・ルーレット』ってミンナ呼んでいた。 別に日本人だけじゃない。 ヨーグルトなんて現地のガキでも食中毒を起こす。 何度も高熱に魘されながら身体を慣らしていく。 だから中国人は『強い』って感じてしまう。 我が国は・・・? 大分昔になるが、『便』の『色』や『臭い』を消す『錠剤』が流行ったことがある。 通常の人の生理を打っ壊してしまうのである。 身体に負担がない訳がないと思うのだが・・・。 『風邪』でもガキに『抗生物質』を飲ませる親。 新型インフルエンザなら兎も角、今のインフルエンザなら1週間、風邪なんか3日も寝れば確実に治る。 そうして身体が自然に耐性を作っていく。 それが、直ぐに『抗生物質』である。 『抗生物質』が殺すのは『細菌』だけである。 絶対に『ウィルス』なんて殺せない。 インフルエンザに罹り、身体の中で『ウィルス』と『菌』が拮抗している状態で、『抗生物質』なんか飲んじまうと『菌』が全滅して、一気に『ウィルス』が増殖してしまう。 急に症状が悪化する訳である。 だから『抗生物質』なんて『薬』を飲まなけりゃ1週間で完治するインフルエンザで2~3週間も寝込むことになる。 そして、その後が問題のようだ。 『抗生物質』は『病原菌』と一緒に『腸内細菌』まで殺してしまう。 非常に胃腸の弱い、身体の弱い『ガキ』に育ってしまうことになる。 人間の『免疫システム』なんて信じられない位精巧なものだ。 臭わない白い『便』にしてしまったり、 直ぐに『抗生物質』を飲んでしまったり、 『健康食品』なんて従来の人間が口にしなかった物を喰う。 『食品添加物』のオカゲで日本国中ドンナ処でもスーパーマーケットで食材が手に入るようになった。 数十年前には持て囃された『食品添加物』なんて従来の人間が喰ってこなかった『怪しげな物』は、健康に悪いと今は忌み嫌う始末。 『健康食品』もオンナジじゃないのか? 『毒のある動植物』を喰った奴の累々たる屍の上に現代の人間がいる。 『健康食品』なんて合成されたり、一部の成分だけ抽出されたモンがホントに健康的なんだろうか? 高校時代の国語の教師がこう言った。 『クソに浸かった大根なんか喰えるか!』 同感である。 クソ(有機肥料)を被った野菜なんて真っ平である。 そんな位なら『食品添加物』や『合成肥料』を使ったものを私は好む。 『食品添加物』や『合成肥料』の問題を知っての上で。 それに一々、健康に良い『喰い物』を探すなんて面倒は真っ平御免だ。 10年後に『実は健康に有害だった』なんて例は五万とある。 だから、一つくらいは、敢えて健康に悪いってことがしたい。 だから、煙草を咥えて雑文を書く。 「20世紀には『健康』にしか興味のない『如何しようもない人間』が地球を覆うことだろう」 ニーチェの啓示である。 好きなものを喰って、好きなことをして・・・。 そんな風に生きていたい。 紫煙を燻らせながら、そう思う。 ジャンル別一覧
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